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インフレの恐怖~ジンバブエの事例から~

2016.6.30
インフレ ビジネスリスク

ニュースや経済新聞をご覧になっている方なら、「インフレ」という言葉を必ず一度は目にしたことがあるでしょう。しかし、実際にインフレがどんなものなのか、インフレになるとどのような社会現象が起こるのかを詳しく説明できる人はなかなかいません。

ここでは、今更聞けない、そしてビジネスマンなら知っておきたい「インフレ」について、アフリカ大陸南部に位置するジンバブエで実際に起きたハイパーインフレの例を見ながらその実態と恐ろしさを解説していきます。
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インフレって何?

新聞やテレビのニュースでよく見かける「インフレ」。「インフレ」とは「Inflation=インフレーション」の略で、英語で「膨張、誇張」といった意味がありますが、これを経済用語として「インフレ」という場合には、物やサービスの値段が上昇する状態が2年以上続いていることを指します。近年毎年のようにガスや電気などの光熱費、バターや小麦など食品の価格が値上げされますが、これらも「インフレ」といえますね。ちなみに、「インフレ」に対して物の価格が下がることを「デフレ」と呼びます。

では、こうした「インフレ」はなぜ起こるのでしょうか。その原因を一言でいえば、世の中のお金の流通量が多くなるからです。つまり、売られている物やサービスに対してお金の量が多くなることで「インフレ」が起きるのです。具体的には、消費税や所得税が減税されてお給料の手取りが多くなったり、年金や子育て給付金などの社会保障が充実したり、日銀が金利引下げ・買いオペなど市場介入をすると、世の中にたくさんお金が出回るようになり、物に対してのお金の価値が下がって物価が上昇するというわけです。

世界ではたびたびこのようなインフレが非常に極端なかたちで起こっています。1991年のソ連崩壊直後のロシア、近年ではアフリカ南部ののジンバブエ、ベネズエラなどでは、たった1年で物価の価値が何千倍にも上がるハイパーインフレと呼ばれる現象が生じ、人々の生活に大きな影響を及ぼしています。

ジンバブエで起きたインフレ

このように、わたしたちの生活にさまざまな影響を及ぼす「インフレ」ですが、実際にはどのような状況に陥るのか、アフリカ大陸南部のジンバブエで起きたハイパーインフレについてご紹介しましょう。

1980年に同国で導入されたジンバブエドルは、かつてはアメリカドルよりも価値のある通貨として取引されていました。それが21世紀初頭、通貨価値の暴落がはじまります。2005年頃からはじまった経済政策はことごとく失敗に終わり、通貨価値下落に歯止めがかかるどころか暴落に加速がかかってしまいました。その結果、2000年には56%だったインフレ率が、2006年には1,282%、翌2007年には66,212%、そして2008年には経済破綻に陥り、インフレ率はなんと5,000億%に上昇。

最終的には、日本円1円=300,000,000,000,000ジンバブエドルに達し、100兆ドル札が登場。経済破綻した2008年の物価は、牛乳500mlが600億ジンバブエドル、牛肉1kgが4,380億ジンバブエドルというのですから、紙幣価値は紙切れ同然になってしまったといえますね。

なぜ狂乱的インフレが起きたのか?

それではなぜ、こうしたびっくりするようなインフレ状態に突入してしまったのでしょうか。そのきっかけとなった要因を大きく2つに分けて見てみましょう。

きっかけ1 政治的要因

ジンバブエはもともと、白人が政治の実権を握るローデシアという国でした。しかし、紛争、民主化運動を経て少しづつ黒人が政治の表舞台で活躍をはじめ、ついに初めての黒人大統領が誕生。これをきっかけにジンバブエ共和国が誕生します。こうして黒人が主権を取り戻し、政治・経済を動かしていくことになります。

きっかけ2 法案の成立

ジンバブエ共和国誕生当時には、植民地時代のなごりから白人が国内の多くの土地を所有していました。これを黒人の手に取り戻そうということで成立したのが、白人に対して「所有している土地を黒人に無料で譲渡しなさい」という法案。しかし、土地は譲り受けたものの技術のない黒人の手による農業は食糧危機を引き起こしてしまいます。この食糧危機によって食料品の価値は上がり、反対に通貨の価値は下がりはじめます。

次にジンバブエ政府の成立させた法案が、外資系企業に対する「保有株式の過半数を黒人に譲渡すること」というもの。株式を無条件に譲渡させるという無謀な条文に加え、違反者は逮捕するというのですから、ジンバブエに拠点を構えていた外資系企業はこぞって撤退してしまいました。

食糧危機、外資系企業の撤退により、ジンバブエ国内には物資の流通が途絶えた状況に。こうした経済状態に追い打ちをかけたのが、「物資を持っている人は市場に売ること」さらに、「物資を売る場合は安く売ること」という法案でした。オークションなどでレア物が高値で落札される例を挙げればイメージしやすいかも知れませんが、物資がないということは、もともと1個100円で売られていたリンゴが200円、300円、ついには1,000円で取引されるようになってもおかしくはありませんよね。物の価値はどんどん上がるわけです。しかし、ジンバブエ政府は市場に物資を供給する際には「安く売りなさい」というのですから、売る側はどんどん赤字になってしまいます。

ジンバブエのインフレはその後どうなったか

このように、二重、三重の失策により、国内企業は次々倒産。失業者は増え、物資はなくなり、インフレは加速するばかり。前述のように、2008年にはジンバブエ共和国の経済は破綻してしまいました。まさに紙同然の価値しかなくなってしまったジンバブエドルは国際社会でも信用をなくし、2009年には発行を停止、2015年には公式に廃止となったのです。その後はアメリカドル、南アフリカのランドなど5つの通貨が採用され、物価とお金の価値が落ち着いたことでインフレは収束をみました。

それにしても、300,000,000,000,000ジンバブエドルを日本円に換算するとたった1円にしかならないとは、なんともやるせない話です。「インフレ」が社会に、そして世界に与える影響、お分かりいただけましたか?「もの」と「通貨」の価値は、どちらかが高すぎたり低すぎたりしてしまうと経済にとってマイナスに働くのです。こうした点に着目して政治・経済のニュースをご覧になれば、これまで腑に落ちなかった疑問点がストンとクリアになるかも知れませんよ。

 
(Edited by SP)

 

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